2020.10.29
去る9月13日(日)、未来に語り草となるイベントが東京タワーのメインデッキで開催された。その夜東京タワーは、再生可能エネルギー(以下、再エネ)によって輝き、音が鳴っていた。 ナイトカルチャーがコロナ禍で受けた大打撃は、今も続いている。その渦中、同イベントには最新ダンスミュージックの祭典「TOKYO DANCE MUSIC WEEK 2020」と、いとうせいこう氏が牽引した自律分散型配信フェス、「#MDL=MUSIC DON’T LOCKDOWN!」シーズンワンの大団円という位置づけもあった。 告知にJ-WAVE(81.3FM)、S/U/P/E/R DOMMUNE、Roland、Pionner DJといった名が踊り、参加アーティストは音楽プロデューサーでDJの大沢伸一氏(MONDO GROSSO)、須永辰緒氏、野宮真貴さん、サイプレス上野とロベルト吉野、そしてナイトクラブシーン隆盛期からの盟友Chieko Beautyさんと共に、小泉今日子さんも名を連ねたことは”事件”だった。加えて、Zeebra氏の飛び入り参加までがあった。 また、新解釈の民謡をバンドRUDIE JAPをバックに、エネルギーアイドル永峯恵さんも新曲を披露した。 中心となって同イベントを実現させたのが、「NAZWA!(Watusi+Naz Chris)」のお2人。 風貌からしてただものでないが、再エネへの理解や高いカルチャーとの親和性など、心掴まれるお話満載だった。
NAZWA! COLDFEETのメジャーデビューから20周年を迎えたWatusiと、ロンドン、インド・カリフォルニア経由のDJ/キュレーターで、若手オーガナイザー・ プロデューサーとしても多忙なNaz Chrisという世代・性別・国やジャンルを超えた2人によるDJユニット。 ”繋がり”、”垣根”を超えユナイトする”WA (輪)”をテーマに【Ring Link Music】を提唱。国内外の野外フェスにも人気の2人によるプレイはバレアリックの精神を背景にTechno/House/Nu Discoなどのジャンルをも自由に行き来きし、壮大な一夜の絵物語を描き出す。 2018年、東南アジアツアーを敢行し、シンガポール、インドネシア、ハノイ、ホーチミンなどでプレイ。 2019年には、1st EP「 KISS THE TOKYO GIRL」をリリース、2020年にJ-WAVE「TOKYO M.A.A.D SPIN」のナビゲーターに就任すると共に、1週間、ダンスミュージックと共にカルチャーと人が繋がる祭典「TOKYO DANCE MUSIC WEEK」を旗揚げした。 【Watusi (COLDFEET)】 (Official web/SNS) www.coldfeet.net (Facebook)www.facebook.com/Watusi.COLDFEET 【Naz Chris】 (Official web/SNS) http://dirty30pro.com/ (Instagram)https://www.instagram.com/xnxaxzx_christina_dj/ (Facebook)https://www.facebook.com/DJ-Naz-Chris-1749749095236723/?ref=bookmarks (Twitter)https://twitter.com/NazChris_dj ーNAZWA!は結成してどれくらいなんですか? Naz Chris(以下、N) ビックリしますよ。まだ2年くらいなんです。 Watusi(以下、W) 3年前は存在も知らなかったから(笑)
N もちろん私は知っていましたよ! だから時間とか、重みとか、付き合いのどうとかいう、いわゆる社会における信頼関係って、もっと「これやろう」、「やらなきゃ!」、「じゃあ、やろう」ということでできる人たちがギュッと深まって、爆発的な何かを起こすことがクラブシーンとかカルチャーだったはずで、自分たちはそれをただやっただけであって。 W 見ていればわかりますからね。 Nazはこれをやる上で前後の2週間、ほとんど寝ていませんから。当然最後の東京タワーだって一睡もしないで来るし、連絡すればすぐ飛んできて、その後ずっと連絡のやりとりは続けるし、まあよく倒れないでやったなと思いますよ。 N たぶん、クサいことを言うと使命感なんだと思います。「これがカッコイイんだ」と思ってきたものが危機に瀕した時に、それは環境問題だってそうだと思うんです。「ヤバい!」と思って動いているだけで、実際に特別なことは本当にしていない。でも、「もっともっとそういう同志がいっぱいいたらいいな」という願望はあります。 だから、そのために大石さんに伝えておいて欲しいんです。 「渋谷区観光大使ナイトアンバサダー」という、ラッパーのZeebraさんが就任している役職があります。ここJ-WAVEも六本木、他にも多くの放送局が港区なので、港区”環境”大使ナイトアンバサダーというのをつくってくれないでしょうか? 「観光」と「環境」で韻を踏みつつ(笑)、そうするととっつきにくいだけでなく、クラブごとってすぐ「怖い」、「どうせクスリでしょ」とかってなってしまうところを気にしなくなるような、純粋に「面白いことで時代をつくりたい」、それで来年に向かいたいと思っています。 そしてその時にラジオやエンタメ全体が再エネ化ができたら、それはすごいと思います。
東京タワーのメインデッキにて挨拶をするWatusi氏
W 本当は、電気の切り替えは人の想いや力だったりするので、サラリーマンばかりの世の中では難しいこともあると思います。でも、そういうところから変えていく。本当はみんな、そうじゃない気持ちを少しだけでも持っていると思うんです。その火を、少しずつ付け直していくのが、「Music Don’t Lockdown(以下、MDL)やTokyo Dance Music Week(以下、TDMW)の仕事だったりするんじゃないかな」ということは、僕はちょっと思っています。 僕は、社会や業界に対して口悪く「クソバカシネ」みたいなことを言い続けてますが(笑)、「そこに残っている火はうまくつけていけたら嬉しいな」と、心から思っています。 ーそもそも、そういった想いが具現化したかたちとしての、ラジオ番組やコロナ以降の取り組みだった。
W TOKYO M.A.A.D SPINもMDLも、理屈や内容を話してやってもらうもんじゃなかったりするじゃないですか。お誘いして「こういう状況だから、こうこうこうしないか」と説明したところで、わからない人が理解するにはなかなか難しいですよね。 ーむしろ、説明不要で共有できている異常事態が大前提にある。 W 「オレが言ってるんだから、やれよ」というのに対して、「わかった、やる」という人じゃないと難しいかなという(笑)。 ー東京タワーでのイベントを終えて、それは東京のカルチャーがコロナ禍において、大きな一つ節目かなということで、お話を伺うべきだなと思って伺いました。 N 本当に、お疲れさまでした。 W 意外と、「倒れるかな?」と思ったんだけど、月曜も普通に午前中から仕事もして、肩こり過ぎたんで2人で夜中にマッサージも行きました(笑)。でもそんなもので、逆にまわりの方々が来年にかけて「ぜひまた話を聞きたい」という、「次はどういう規模感でやるか」という話をしています。「1回やるということは、10年やるということ」って明言しちゃったので、そういう責任が出てきちゃっています。 TDMWはそういうことで、そこにMDLのファイナルということで合体させて、いとう(せいこう)くん自身もひと段落じゃないけれど、時代はこんな最中でもどんどん流れているので、一つのピリオドではありました。 でもピリオドはピリオドに過ぎないので、じゃあそれをどういうタイミングでリンクさせながら走らせるのか、現状はまったくゼロ回答。でもそこには責任があるので、そっちを痛感しはじめています。
N 本来エンタメとかこういうクラブシーンとかダンスミュージックって、3密だからこそな文化じゃないですか。だからこの、「『実感のない実感』をこれから繰り返すことになるんだな」という実感を、今後繰り返していくんだなということを実感しています。 人がほとんどいないところで発信して、でも画面の向こうでは2万人が聞いているという、それはDJだって目の前に客はいないけど「2万人聴いてます〜」という実感のない実感を、今はまだ整理するのがやっとです。 たぶん今、世界中の人たちが「実感のなさを実感に変える作業」の最中なんだと思います。当日は関係者の方だけがいる、無観客の状態ではあったんですが、見守られていて、支えられているという実感があることで人間は頑張れるという、人が笑顔でいることがわかるとそれがモチベーションになるということが再確認する作業でした。 ーTDMW、TOKYO M.A.A.D SPIN、さらにはS/U/P/E/R DOMMUNEとMDLがあって、どこまでが想定内で、どこから先がフリースタイルで拡張していった部分でしょう?
TOKYO M.A.A.D SPINロゴ
W わかりやすいのは、J-WAVEの番組は、J-WAVEさんが「TDMWみたいなことをやるなら、乗ろう!」ということで、企業としてのスポンサードは難しいけど、それに向けて「宣伝のような番組枠をあげる」という話でスタートしたの。 「1週間月〜土、深夜3〜5時をそのために使いなよ」という風に言っていただけたということで、それは一つずっと走っていました。あとは昨年夏、9/9をダンスミュージックの記念日に制定できたということがあって、それをヘソとして「アワードを1日やる?」、「何しようか?」みたいに考えていたら「1日じゃ足りない。1週間にしましょう!」ってNazが言い出して(笑)。「マジか」。じゃあ「実行委員長やれよ」という話になったのが、ちょうど1年前のことです。 当時もちろんコロナは予想していなくて、根を掘っていく作業、、もともと「官民でやりたい」というアイディアはありました。渋谷区であれば長谷部区長や、できれば東京都くらいの規模の自治体を組んだ、それくらい「オフィシャルなものにしたい」という。 あとはダンスミュージックやナイトタイムエコノミーというものが注目もされてきて、企業さんとも、なるべく大きな打ち上げ花火とすべく動いてきました。 それらが結局コロナで、いとうくんがMDLのことを言い出したという、それは当然予期せぬ事態でした。 N たぶんこれは体内時計で、「いついつまでにこういう関わりでシーンにいよう」とか「ここまでにこれをやっていよう」という意識の中で、2020って割と節目の年だったんです。そこまでに必ず、こういう人間関係、コミュニティ、自分の目標を築いていれば「目標に辿り着くだろう」という確信があって。 ーそれにコロナまでもが重なってきた。
コロナ禍を受けていとうせいこう氏が発案、立ち上げ、そして牽引した#MDL=MUSIC DON’T LOCKDOWN!
N コロナ抜きでもそういう準備をしてきていたわけです。 自分の中では、カルチャーとかシーンに対する自分自身の活動の応えみたいな、それはDOMMUNEの宇川さんやヒップホップシーンの人たちと知り合って、もちろんJ-WAVEではお仕事をさせていただいてきて、じゃあ「全部ドッキングさせちゃえばいいんじゃん!」というアイディアがワッと湧いてきていて。 さらにはいとうキャプテンも、「MDLやるぞ!」と言いだして。当時私は、いとうせいこう is the poet(ITP)のマネージメントとして、予期せぬ展開とはいえ「ちょっと手伝ってよ」。だったらそれもまとめて、「オンラインでやっちゃえばいいじゃん!」というのが4、5ヶ月前のことでした。 それで「ラジオもある」、「DOMMUNEもある」という時に、「これは映像とラジオとオンラインでできる!」と思ったんです。 ーでは、DOMMUNEくらいまでは既定路線だった。
S/U/P/E/R DOMMUNEと連動したTDMWの9/11(金)、
いとうせいこう氏、Zeebra氏や議員の方々、SaveOurSpaceの方と共にみんな電力・大石代表も登壇
N 「宇川さんとやれたらいいね」という願望はあって、事前からWatusiさんには相談していました。でもそれもただの思いつきで、B-BOY、B-GIRL的な「今こそユニティ!」という空想があって、これはもう「話せばOKいただける」という勝手な想いがありました。 W 当初から、TDMW中は毎日3〜5本くらい企画が走っている予定だったんです。カンファレンスもあれば、回遊型の美術館が毎晩ナイトクラブになったり、その横ではサイレントディスコがあったり、常に都内5ヶ所くらいで何かが起きている一週間みたいなイメージでした。 当時はもちろん有観客の予定で、それがこういう状況になったのともう一つ、当初は割と、ダンスミュージック界隈のDJ連中をいっぱいまとめて「みんなでやろう」というつもりだったんですが、「みんなじゃできないな」ということも思ったんです。 それはコロナのちょっと前くらい。 ーできないというのは、、? W みんなが、思った以上にクソだったということですね。
Watusiさんの気になる一言で終わった初回記事。カルチャーとエネルギーの接点に迫る次回、そして最終回をお楽しみに!
撮影:森拓実
エネルギーのポータルサイト「ENECT」編集長。1975年東京生、School of Visual Arts卒。96〜01年NY在住、2012〜15年福島市在住。家事と生活の現場から見えるSDGs実践家。あらゆる生命を軸に社会を促す「BIOCRACY(ビオクラシー)」提唱。著書に『虚人と巨人』(辰巳出版)など https://www.facebook.com/dojo.screening X @soilscreening
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